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映画や本の感想をだらりだらりとマイペースに書いていきます。

【感想】必見!正しいお金の使い方。 スティーブン・スピルバーグ 「シンドラーのリスト」

第二次大戦中ドイツ人実業家オスカー・シンドラーは事業の成功を目論んで、ドイツ占領下ポーランドの都市クラクフにやってきます。クラクフにはゲットーと呼ばれるユダヤ人収容施設があり、シンドラーは安価な労働力としてそこに住むユダヤ人を雇うことに決めました。彼が手がけたホウロウ工場は戦争特需もあり、成功を収めます。当然シンドラーも財産を築いていきました。

 

 

ところが1943年3月、プワシュプ強制労働収容所の所長としてやってきたアーモン・ゲートの指示によりクラクフゲットーは解体されてしまいます。映画は全編を通じてモノクロなのですが、人々が逃げ惑うなかに赤いコートを着た少女が登場します。このパートカラーの技法が見る人の心をつかんで離さないものになっています。この少女も後に遺体となって現れるのですが、その姿が商業主義に染まっていたシンドラーの心を動かします。

 

シンドラーチェコに工場を移すことを理由にユダヤ人労働者を要求します。その数1200人。彼のリストに名前が載せられた人はかの悪名高きアウシュヴィッツへの収容を間逃れることができたのでした。

 

そして迎えた1945年。ドイツの無条件降伏により戦争は終結し、ユダヤ人たちは解放されます。ナチ党員でもあったシンドラーは戦犯として私設収容所を去ります。シンドラーが去っていくラストシーン。あと1人、いやあと10人救えたと後悔し、崩れ落ちるシンドラーの姿に思わず涙してしまいました。映画のため脚色された部分は大いにあると思います。実際のシンドラーがどういう人物だったかはこれから調べてみたいと思いますが、1200人ものユダヤ人を虐殺から救ったのは紛れもない事実です。

 

作中シンドラーは、力と正義の違いをアーモン・ゲートに説きます。アーモンも改心したかに思われましたが、結局のところアーモンは彼らの「正義」を行ってしまいます。力とは相手を殺すに値する正当な理由があるにもかかわらず、殺さないことだとシンドラーは言います。つまりは相手を許すこと、それこそが力だと。

 

この時代のヨーロッパの史実をもとにした映画を何本か見てきましたが、どの作品も本当に面白いです。funnyな意味ではなくinterestな意味で。俺としては過去の大戦を知るよいきっかけになると思うし、風化させないための1つの装置として機能しているように感じます。「ハイドリヒを撃て」「ダンケルク」も同様に史実をもとにした壮絶な映画です。死がまさにすぐそばにあった時代だからこそ人間としての根幹が晒されていたのではないでしょうか。生きていくには最悪でしょうが、ある意味では人が人としてあろうとすることをもっとも顕在化させていた時代の1つだとおれは思います。