誰かの為のブログ

映画や本の感想をだらりだらりとマイペースに書いていきます。

【感想】覚悟とは、暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことだ。岸見一郎 古賀史健「嫌われる勇気」

過去に何度も読んだのですが、改めて感想を書きます。

 俺が初めて「嫌われる勇気」を読んだのは就活生の頃でした。いまから3年ほど前です。大して就きたい仕事があったわけでもなく、ただ単に大企業というだけでエントリーシートを提出してなんとなく面接へ漕ぎ着けた企業がありました。面接に際してもう一度履歴書の提出が必要となり、そこには「最近感銘を受けた本はありますか」という設問があり、私は急ぎ図書館へ向いました。そこで借りたのが「嫌われる勇気」でした。

 

 青年と哲人の対話形式でアドラー心理学を解説している本書はとても読みやすく、思い悩む青年の姿は当時の自分にだぶっていたように思います。実際彼が悩んでいる内容はまさに俺自身が感じていることそのものでした。今での彼の姿は俺に似ています。

 

 「可能性の中に生きているうちは、自分を変えることはできない」このフレーズは今も俺の胸に突き刺さったままの言葉です。あの時あぁしていれば、あれさえなければ、これさえできれば、おれの人生は180度変わっていたのに。そう思うことがたくさんありました。変えられない過去にいつまでも思いを馳せる。どうしようもないことに胸を痛め、目の前のことを疎かにしてしまう。悪いあの人と、かわいそうな俺。就職活動に臨む時期になっても俺は自分の将来にしっかりと向き合おうとしませんでした。結局殆ど教授のコネで大して興味も無い業界に私は就職することになりました。この時私は本書をただの就職活動のネタとしてしか見ておらず、著者である岸見氏、古賀氏の思いをそしてアドラーの思想を汲み取ろうとする努力すらしていませんでした。

 

 ただなんとなく始まった社会人人生。何の面白みも感じぬまま時間だけが過ぎていきます。休みも少なかったこともあり休日の私は殆ど無気力に狭い部屋で過ごすだけの生活を送っていました。再び本書を手にしたのはいつだったでしょうか。忘れてしまいましたが、気が付けばまた読み返していました。他人との関わり方や、人生でなすべきこと、それに向う態度。人には誰しも劣等感があります。しかしそれ自体は悪い物ではなく、むしろよりよく成長したいという感情の表れだと本書の中では説明されています。心の中にいつまでも劣等感を抱えたままでは人は生きていけません。劣等感を解消するためにも努力をし、理想とする自分に近づこうとするのです。しかし人間みんながみんな努力ができるわけではありません。そうした人たちは劣等感を傘に自分を特別な人間に仕立て上げます。お前に俺の気持ちは分からないだろう、誰にだって俺の気持ちは理解はできないんだと安直な形で自分を特別な存在にし、劣等感を払拭しようとします。誰にだって思い当たる節はあると思います。ですが人間そんなことでは何も進歩しません。

 

 本書は生きる覚悟を説いています。ただただ目の前に広がる人生の荒野に、傷つくことを恐れず一歩踏み出していく。見つめるべき相手は理想の自分。比べるべき相手は昨日の自分。周囲の人に何を言われたって自分のしたいことをひたすらすべきなのだと。ひたすらにダンスを踊り続ければ、気が付いたときにはとんでもないところまで、かつて理想としていた自分になれているはずです。

 

 取り留めなく書いてきましたが俺自身今の状況に、現状に満足していません。満足している人なんていないのかもしれませんが。それでもこうして文章を書いている間は少しずつ理想の自分に近づけているような気がします。

 

 今の自分に「嫌われる勇気」があるかと言われれば、自信はありません。ですが、以前より周囲の目は気にならなくなったと思います。自分のしたいことをとことんする。納得するにはそれしかないです。